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2022.8.14(日)~8.18(木) 長沼 翔 版画展 夜の航海


長沼 翔 版画展 夜の航海

2022.8.14(日)~8.18(木)
12:00~19:00

太陽を捨てた ここは極夜
灯が消えてどのくらい経ったんだろう
頭上の星で方角を確かめる
かつて見た地図を頼りに舟を漕ぐ
真っ暗な海
なにもこわくない
なにもいわれない
いたくもかゆくもない

目からこぼれた海水は 涙の水溜まりに溶けてゆく
どのくらい経ったっけ
まあいいや
目的地なんてないから のんびりいこうか

極夜の海を進む
海の波を切る
ひとりぼっちの夜の航海

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自身2回目となる個展“夜の航海”では,大型作品1点を除いたすべての作品が,大学院を修了した後の新作となります。
学生という肩書きがなくなり,晴れて大海原に放り出されたわけでありますが,あの頃に比べると漠然とした不安感は少なくなりました。
それはこうした展示の機会をいただけたり,制作で きる環境に身を置かせてもらえているからだと思います。
そのことへの感謝の気持ちを忘れずにこれからも制作を続けていきたいです。
知っている方もおられると思いますが,私は昨年末に体調を崩し,一時はどうなることかと思ったのですが,以前と変わらずに生活することができ,頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれて いることなど忘れてしまいそうです。
コロナウィルスが蔓延する非日常が,いつの間にか日常へとなったように,痛みは消え傷痕になり,次第に違和感もなくなっていく。
人間は否応なく適応していくものだと実感しています。
今回の展示は,“夜の航海”をテーマに銅版画を制作しました。どの作品にも共通しているのは,「あてどなさ」だと思います。
行くあてもなく彷徨うことは,ネガティブに捉われがちですが,ウロウロしながらも,ここではないどこかを目指して,歩みを進める。
海に行き止まりはありませんが,そんな行き当たりばったりな航海を表現した展示です。
そして作品は,観てくれた人の心の中でも,旅をしつづけます。
その航海が,希望で満ち溢れたものでありますように。

 

長沼 翔 (ながぬま しょう) 作家略歴

1998′
長野県生まれ
2020′
日本大学芸術学部美術学科版画専攻卒業
日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻版画分野入学
2022′
版画工房 Kawalabo! 11 期研究生

<受賞歴>
2019′
第 44 回全国大学版画展 優秀賞・町田市立国際版画美術館賞
2020′
日本大学生産工学部賞
第45回全国大学版画展 優秀賞
2021′
第8回山本鼎大賞展 入選
日本版画協会 第 88 回版画展 賞候補
第46回全国大学版画展 優秀賞・町田私立国際版画美術館賞
2022′
2022年度ヤング・プリントメーカー賞
中華民国第二十回国際版画ビエンナーレ 入選

<展覧会>
2018′
第43回全国大学版画展 (町田市立国際版画美術館)
2019′
版画五美大ポートフォリオ版画集展(多摩美術大学アートテーク)
第44回全国大学版画展 (町田市立国際版画美術館)
2020′
日藝版画修了卒業制作展 (ギャラリー川船)
東京五美術大学連合卒業・修了制作展 (国立新美術館)
一家に一枚プロジェクト 2020 (やないず町立斎藤清美術館)

 

“Don’t Let Me Down”
950mm×606mm
銅版画 雁皮刷り、エッチング、アクアチント、ドライポイント、フォトグラヴュール