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2013年5月8日(水)~5月20日(月) 樋口晃亮 写真展「照らす陰、延びる光」

2013年5月8日(水)~5月20日(月)までは樋口晃亮展を開催致します。
*5月8日のみ12:00-19:00まで

初日18時よりオープニングパーティを開催致します。

会期中火曜・金曜 休廊
12:00-18:00 (最終日17時迄)

title:BEAM#1 time:1min. year:2013 medium:Light jet Print

樋口晃亮
1986年 神奈川県生まれ
2008年武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業
2010年 武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻写真コース修了

●制作について
学生時代から主に自作によるピンホールカメラ(カメラオブスクラ)を用いて作品を制作している。
その大きさは時に身体をも超える大きさになる事もあるのだが、その中へ入るとカメラの中で起きている出来事が見えてくる。
暗闇(暗室、暗箱)の中は、そこは重力だけが存在している世界だ。
私の体は消えてゆき、まるで眠りの中へ入り込むような、全てが無へと還る感覚になってゆく。
映像を手に入れる為に空けた一点の穴からは、光線が放たれ反対側の面に現在の世界(外の世界)が投影されている。
我々の網膜そのものである。カメラオブスクラの中、私はそれを見ていた。

この不安定な精度と時間性(長時間露光)をもった特有の撮影方法は、ごく自然でありきたりな光の存在を顕著に現前させる。
見えかけていたのは、海なのか、山なのか、人なのか、建造物なのか、景色を眺めようとするが、不明瞭で儚げな映像である。
時間的制約の中で刻々と網膜(画面上)に焼かれてゆく様子は、まるで霧がかった景色が晴れてゆくようである。
存在と不在、瞬間性と時間性の混和的状態の世界がそこにある。

そして、その映像は我々がもたらす言葉や知識、経験、記憶の一部と混ざり合い、
我々の中で本来見えていなかったもう一つの世界を表出させる。
それは光と闇の中に我々の精神を映す作業なのである。
写真そのものではなく、写真というフィルターを通して我々の日常的な視覚の無自覚な有様を問い、
同時に自身へ、世界をどう捉えるのか問いかけている。

●展示について
今回の作品では意図的な光の造作による写真と日常的な光(太陽光)による写真を制作しています。
作品に共通して見られる白く浮かび上がる像は、刻々と黒く焼かれた光の痕跡であり、
ピンホールカメラで捉えられたその写真たちの撮影時間は、1分から最大で420分にもなります。
展示会場内にてタイトルの情報として表記されるそれぞれの数字にも注目して頂きたいです。
なぜならばこのわずかな情報は、我々の抱える物語(イメージ)と目の前に現れている世界を関連付ける為の鍵となるかもしれないのです。
そして、不明瞭な写真は「場所」という特性を隠微にさせ、その実態を不特定にさせるが、
ある種の匿名性というのは自己から他者への交感作用を強くし、写真の虚実の境界を取り払う事を可能とさせると考えます。
今回の展示では、これらの二つの切り口からの撮影方法(意図的な光と日常的な光)で共通の特徴をもった写真を展示する事で、
一体「見る」とは何なのか、視覚の実質を注意深く見直す為のきっかけとなればと思います。